レンタルオフィスでも銀行の法人口座は開設できる?
事業をスタートするためには、銀行口座がなくては始まりません。顧客・取引先からの信頼度や経理業務のことを考えると、ぜひとも法人口座を開設しておきたいところです。
そこで不安になるのが、「レンタルオフィスでも法人口座開設はできるのか?」という問題ではないでしょうか。
今回は、レンタルオフィスで法人口座を開設する際の、金融機関ごとの難易度や利便性、成功率を上げるポイントをご紹介します。
目次
レンタルオフィスでも銀行の法人口座は開設できる?
結論からお伝えすると、基本的にはレンタルオフィスでも銀行の法人口座開設が可能です。
ただし、近年は金融機関の口座開設の審査が厳しくなっています。過去に、振り込め詐欺集団などがバーチャルオフィスを利用し銀行口座が悪用されていた事例があり、警察庁が金融機関に対して審査の厳格化を求めたからです。
レンタルオフィスは厳密にはバーチャルオフィスとは異なり、実際のオフィスとして機能するため、バーチャルオフィスよりも審査は通りやすいといえます。
とはいえ、レンタルオフィスかどうかに関わらず口座開設自体が難しくなっているため、最終的には各金融機関の判断に委ねるほかありません。
金融機関の種類
規模や取引形態などによって、金融機関は以下の3つに分類されます。
- 都市銀行(メガバンク)
- 地方銀行・信用金庫
- ネット銀行
審査の厳しさは、都市銀行>地方銀行・信用金庫>ネット銀行というのが一般的です。
この章では、それぞれの金融機関について、審査の難易度や利便性、メリット・デメリットなど見ていきましょう。
都市銀行(メガバンク)
都市銀行や、いわゆるメガバンクといわれる銀行に法人口座を持っていると、取引先からの印象アップにつながります。ATMや支店が多く、利便性の高さも魅力です。
審査基準が公表されていないケースも多いですが、審査の難易度は最も高いとされます。もちろん、レンタルオフィスだからといって即刻落とされるわけではありません。きちんと資料などを用意して臨めば、法人口座開設も可能です。
デメリットは、取引のほとんどに手数料が必要で高いことが挙げられます。起業したてで収益が少ないうちは、手数料が負担になってしまうかもしれません。
地方銀行・信用金庫
都市銀行と比べると、地方銀行・信用金庫の審査は通りやすい傾向にあります。
地域に密着し、中小企業への支援が充実している銀行が多いのもメリットです。小口融資にも対応してくれるケースもあるため、起業したての頃には強い味方になるでしょう。
一方、都市銀行に比べてATMや支店数が少なく、利便性の面ではやや劣ります。また、信用金庫の場合、特定の紹介がないと法人口座の開設が難しいケースもあるようです。
ネット銀行
ネット銀行は、ここで挙げたなかで最も審査に通りやすい金融機関です。
店舗での手続きが不要で、インターネット上で完結するというのも魅力的なポイントでしょう。
メリットは何と言っても手数料の安さです。振込や出入金の手数料が安いため、少額の取引が多いのであれば、ネット銀行はかなり使いやすいのではないでしょうか。また、24時間365日、いつでも利用できるため利便性も高いです。
しかし、緊急時や直接相談したい場合に対応してもらえる窓口がありません。電話やメールでの相談になるため、解決までに時間がかかる可能性があるのが難点です。
法人口座開設の成功率を上げるポイント
レンタルオフィスだからといって、それだけで審査に落とされるわけではありませんが、事業の信用性が低ければ、審査に通ることはできません。
この章では、法人口座開設の成功率を上げるポイントをご紹介します。
事業内容・目的を明確にする
以下のようなケースでは、どういう会社なのか実態が把握できず、審査に落ちてしまう可能性が高いです。
- 事業内容が複数あってジャンルも雑多
- 事業の目的が曖昧ではっきりしない
まずは事業の内容と目的を明確にし、金融機関の担当者に簡潔に説明できるようにしておくことが不可欠です。
このとき注意しておきたいのは、業界に対しての知識がなくても理解できるような説明をすることです。金融機関の担当者は、あくまで金融のプロです。すべての業界に精通しているわけではありませんから、専門用語などを多用すると伝わらなくなってしまうことがあります。
素人が聞いてもすぐにわかる説明を心がけましょう。
資本金の額に注意する
資本金の額にも注意が必要です。
会社の設立は資本金1円からでも可能ですが、法人口座を開設したい場合、資本金の額が低すぎるのは好ましくありません。
審査において、資本金の額は「会社の運営力」と判断されるケースがあります。そのため、あまりに金額が低いと事業運営の体力が乏しいとみなされてしまう可能性があるのです。
一般的には、少人数の企業の場合、資本金は100~300万円ほどとされます。したがって、法人口座を開設するときも、少なくとも100万円以上の資本金があるほうが、審査で悪評価を受けずに済むでしょう。
レンタルオフィスと距離が近い銀行を選ぶ
法人口座を開設する金融機関は、レンタルオフィスと距離の近い銀行を選びましょう。
レンタルオフィスの所在地と銀行の支店の住所が大きく離れていると、審査が通らないばかりか、申請自体ができないケースもあります。特別な理由がないのであれば、基本的にはレンタルオフィスの最寄りの銀行・支店を選ぶのが無難です。
また、レンタルオフィスとの距離が近ければ、銀行側もオフィスの存在を知っている可能性が高いため、安心材料になるでしょう。
なお、ネット銀行での法人口座開設の場合は、実店舗や窓口がないため、所在地を気にしなくても問題ありません。
ホームページを用意する
法人口座開設の審査では、ホームページやWebサイトの内容をチェックされることが多いようです。ホームページがないと信用性が低いと判断されてしまう可能性があるため、必ず会社のホームページを作成しておきましょう。
ホームページをチェックすれば、審査の担当者が会社の事業内容や実態を知ることができます。
金融機関だけでなく顧客からの信頼・安心感にもつながるため、ホームページは作っておいて損はありません。
営業・取引の実態を証明する資料を用意する
営業や取引の実態を証明する資料も必ず用意しておきましょう。
具体的には、実際に事業で使用した契約書や、取引先から発送された発注書・納品書・請求書・領収書などです。これらの書類は、業務の実態を示す証拠となります。
前述した「事業内容の説明」にもなるため、銀行によっては追加資料として提出を求められることも少なくありません。いつ提出を求められても良いように、きちんと揃えておきましょう。
法人口座開設に必要なものリスト
法人口座開設には、必要書類や準備すべきものがたくさんあります。スムーズに審査を進めるために、申請時にできる限り揃えておきましょう。
<口座開設に必要なものリスト>
書類 | 概要 |
会社の登記簿謄本 (履歴事項全部証明書) | 発行後3ヵ月以内の原本であることが必要です。 |
会社の定款 | 必要に応じて提出します。 |
会社の銀行印 | |
代表者の印鑑証明書 | 発行後3ヵ月以内の原本であることが必要です。 |
代表者の実印 | |
代表者の身分証明書 | 運転免許所、パスポート、住基カード、 マイナンバーカードのうち、いずれかの 写真付き身分証明書が必要です。 |
会社の事業内容がわかる資料 | 会社案内のパンフレットや商品サンプル、 見積書などがあれば資料として用意しましょう。 実際に使用した請求書や契約書、領収書、 納品書なども会社の実態を示す資料となります。 |
その他資料 | 実績が少なく事業内容を示す資料が少ない場合、 事業計画書や取引先情報、職務経歴書などを 補足資料として準備しておくと印象アップに つながります。 |
官公庁発行の免許・許認可 | ある場合は提出します。 |
レンタルオフィスの契約書 | 準備しておくと審査がよりスムーズです。 |
必要な書類は基本的には表のとおりですが、銀行によって必要書類も異なりますので、あらかじめ確認しておくことが大切です。
まとめ
レンタルオフィスだからという理由だけで法人口座の開設を断られることは、基本的にはありません。
しかし、近年は金融機関の審査が厳格化され、法人口座の開設が難しくなっています。
そのため、事業内容や会社の実態を明確にし、信用性を高めることが欠かせません。
各金融機関によって、審査の難易度は当然変わります。
- 都市銀行(メガバンク)
- 地方銀行・信用金庫
- ネット銀行
それぞれ、メリット・デメリットや利便性も違いますので、事業規模に合わせて金融機関を選ぶのがよいでしょう。