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私募債とは?活用のメリット・デメリットと3つの注意点

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私募債

手軽かつ低コストで資金調達できる私募債は、新規事業やベンチャー企業ならば活用したい方法です。私募債の概要をはじめ、メリット・デメリットや発行から償還までの流れを紹介します。活用する際の注意点も参考に、資金調達の手段としてお役立てください。

起業するにあたって、まず資金調達をすることが重要ですが、銀行での借り入れをするには担保や保証人の用意などの厳しい条件をクリアする必要があります。そこで、銀行での借り入れ以外の資金調達としておすすめなのが私募債(しぼさい)です。私募債は、手軽かつ低コストで資金調達できる手段として、ベンチャー企業や中小企業から注目されています。

当記事では、私募債についての概要とメリット・デメリット、発行から償還までの流れを詳しく解説します。

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私募債とは?特徴と2つの種類

私募債とは、資金調達のために企業が投資家に販売する社債の一種で、社債の発行対象が少数の投資家に限定されていることが特徴です。「少人数私募債」と「プロ私募債」の2種類があり、社債の発行条件がそれぞれ異なるため、目的に応じて適した方法を選択する必要があります。

少人数私募債プロ私募債
・勧誘対象は50人未満に限定される
・譲渡制限がある
・発行総額は1億円未満に限定される
・1口あたりの最低発行額は、1/50以上が必要である
・適格機関投資家のみ対象となっている
・人数制限がない
・発行総額、1口あたりの最低発行額に制限がない

一般的に少人数私募債は債権者数の管理を行うため、発行対象は経営者の親戚や友人、取引先などの関係者とする場合が多く存在します。
どちらも規模が小さな資金調達ですが、ベンチャー企業や中小企業でも利用しやすい方法です。

公募債との違い

企業が発行する社債は「公募債」と「私募債」の2種類です。

公募債は、多くの一般投資家を募るため規模の大きい資金調達が可能ですが、法律で厳しい規制が定められています。さらに、手続きが複雑で手数料によるコストが大きいため、中小企業にとっては利用しづらい傾向が見られます。
一方で私募債は、特に有価証券の届出や社債管理者を設置する必要がないなど規制が緩やかです。また、手続きが簡単なため、公募債と比較して手軽に資金調達ができます。

私募債のメリット・デメリット

公募債と比較して私募債は利用しやすく、低コストで効率よく資金調達ができる点が特徴です。銀行での借り入れや公募債が難しい中小企業やベンチャー企業にとって、理にかなった方法ではありますが、活用するにあたってメリット・デメリットを念頭に入れておく必要があります。

メリット1:資金調達のコストを抑えられる

前述したとおり、私募債はコストを低く抑えて最低限の費用で資金調達ができます。直接融資であれば証券会社や監督機関を通さないため保証人や担保の必要がなく、申請や依頼などの工程も省けます。結果として、社債発行にかかる手間や手数料が少なく済み、コストカットにつながります。
また、返済方法や償還期間、利息に関する設定などは借り手側である企業が任意で決定でき、購入希望者と交渉しながら柔軟に設定できる点も魅力の1つです。

メリット2:発行の手続きが簡単にできる

私募債発行は、公募債発行に比べて簡易的な手続きだけで社債を発行できます。一般的に公募債は、厳格な規制が法律によって定められているため手続きに時間を要し、有価証券届出書の提出だけでも1か月ほどかかります。
私募債であれば、取締役会または株主の決議で社債発行ができるため公募債と比較して事務負担が少なく、簡単かつ早期に資金調達が可能です。また、銀行保証付私募債を利用すれば手続きのほとんどを担ってくれるため、さらに手続きが簡略化されます。

メリット3:信用力を高められる

私募債は通常の融資とは違い、信用保証協会や金融機関から社債に関する保証をもらえる仕組みです。一定の財務水準があり、優良と認められる企業が発行できる社債でもあるため、日々企業審査をしている金融機関からのお墨付きがもらえることになります。企業の信頼を獲得できるだけでなく、財務内容が健全であることをアピールするチャンスにもつながります。

また、社債の発行は証券保管振替機構に記録・公開されるため、企業の経営状態の良さを広く知れ渡らせる効果がある点も大きなメリットです。

デメリット1:リスケジュールができない

私募債には、仮に業績が悪化したとしても、通常の借り入れのようにリスケジュールができないというデメリットがあります。どれだけ財務状況が安定している企業でも、経営にはさまざまなリスクが付きまとうため、徹底した資金体制管理を整える必要があります。

万が一、返済が間に合わないときは、再度私募債を発行して次回の償還期日に一括返済する方法が一般的です。しかし償還できないときは、信用力が下がる可能性があるため、私募債のリスケジュールは危険が伴います。

デメリット2:財務状況が優れていない場合は発行できない

私募債は、財務状況が悪い場合は発行できない点も、デメリットと言えるでしょう。公募債と比べると発行手続きやコストが簡略化されますが、基本的な条件として財務状況が悪い企業は私募債の発行自体が困難です。
私募債の発行にあたっては、純資産額や自己資本比率などの企業の財務状況が厳しく審査されます。発行基準をクリアできない場合は発行ができません。

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私募債を発行して償還するまでの流れ

以下では、私募債の発行から償還までの流れを解説します。

1. 私募債発行の目的決定、私募債発行の決議
事業拡大資金や設備資金など、社債発行の目的となる具体的な発行理由と資金を明確にします。また、私募債発行について取締役会などの決議によって決定し、議事録を作ることも必要です。
2. 募集要項の作成
発行金額・償還期限・償還方法・利率などの募集要項を決定し、必要であれば勧誘の際に使用するパンフレットなど、説明資料も作成します。
3. 私募債申込受付・割当通知
説明会の開催や直接訪問などの方法で勧誘を行います。このときに重要なのが、勧誘する人数が49人以下までという点です。結果的に引受を希望しなくても、一度勧誘を行った人は人数に含まれるため注意が必要です。社債購入の申込を受付後は、発行総額・引受人数・発行件数を確定し、募集決定通知書を引受人に送付します。
4. 社債の発行・管理
引受人から社債代金の払い込みを受けた後に社債を発行します。発行した社債に関する投資家情報などは社債原簿に記録し、管理が必要です。
5. 社債の償還
発行時に決めた償還期日が来たら、元本を一括償還または定時償還します。すべての社債を償還したら、私募債にまつわるすべての工程は終了です。

私募債の活用に関する注意点3選

私募債の活用する際の注意点として、以下の3点があります。

・節税効果は期待できない
以前は、少人数私募債に源泉分離課税が適用される制度を利用し、役員が企業に資金を貸し付け、償還の際に給与に変えて利息を支払うことで節税ができました。しかし2013年に税制改正が行われ、高額所得者が利子所得を得た場合、累進課税による高い課税が適用されることとなったため、節税効果は期待できないと言えます。

・調達コストが高くなるケースもある
銀行引受を利用する銀行保証付私募債では、手数料がかかるためコストが高くなります。金額は銀行によって異なりますが、発行事務手数料や保証料、引受手数料などさまざまな名目で、数百万円から数千万円ほどかかるケースも珍しくありません。

さらに償還時には、債権者に対し利息の支払いなどが必要となるため、場合によっては融資よりも高くなる可能性があります。

・資金調達の方法は豊富にあるかねてより私募債は、銀行での借り入れより早く簡単に資金調達でき、企業の知名度を向上できる手段として注目を集めていました。しかし現在は、金融機関からの融資だけでなくクラウドファンディングやエンジェル投資家からの出資など、私募債以外にも企業が資金調達する方法は多様化しています。そのため、資金調達の際は私募債に限らずほかの方法も検討するとよいでしょう。

まとめ

規制が緩やかな私募債は、新規事業やベンチャー企業の資金調達として利用しやすい方法と言えますが、場合によってはコストが高くなってしまうなどの注意点があります。そのため「本当に自社の資金調達には私募債が適しているのか」といった、事前の吟味が重要です。

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