起業するには資金はいくら必要?起業に必要な資金の調達方法
投稿日:2025年3月27日
更新日:2025年5月1日

起業するには一定の開業資金が必要です。資金不足でスタートにつまずくのは避けたいものの、具体的な金額や資金調達の方法が分からず、起業に踏み出せない方もいるでしょう。起業に必要な資金は個人か法人か、また業種や規模によって大きく異なります。
当記事では、起業に必要な資金額の目安、現実的に活用可能な資金調達手段を詳しく解説します。自己資金だけでなく銀行融資や制度融資、日本政策金融公庫、クラウドファンディングなど、さまざまな資金調達先を紹介しますので、自分に最適な資金集めの方法を見つけて夢への一歩を踏み出しましょう。
目次
起業するには資金調達の前に事業計画が必要!
起業時に資金調達を成功させるためには、まず事業計画の作成が必要です。事業計画書は、ビジネスの目的や戦略を明確化して実行の可能性を高めるだけでなく、金融機関・投資家からの事業資金や協力者を集める際の重要な判断材料となります。
一般的に必要とされる事業計画書の主な項目は以下の通りです。
- 事業コンセプト(理念・ビジョン・事業目的)
- 創業者の経歴や経験
- 事業内容と提供するサービス・商品の特徴
- 市場環境および競合分析
- 販売・マーケティング戦略
- 取引先や提携企業の情報
- 経営・運営体制(人員計画)
- 売上予測および収益見通し
- 資金調達方法と資金の使途
- 返済計画(キャッシュフロー計画)
起業するにはいくら資金が必要?
日本政策金融公庫総合研究所の「2024年度新規開業実態調査」によると、開業費用の平均値は約985万円、中央値は約580万円です。約4割が500万円未満で起業しており、全体として少額化の傾向にあります。
(出典:日本政策金融公庫総合研究所「2024年度新規開業実態調査」/ https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kaigyo_241127_1.pdf)
起業と一口に言っても、個人事業主か法人かで必要な費用や手続きは異なります。ここからは、個人事業主と法人に分けて資金の目安を詳しく説明します。
個人事業主の場合
個人事業主として起業する際は、「個人事業の開業・廃業等届出書」を事業開始後1か月以内に、青色申告を行うなら「所得税の青色申告承認申請書」を開始後2か月以内に所轄の税務署へ提出する必要があります。
(出典:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」/ https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm)
(出典:国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」/ https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm)
これらの手続き自体に費用はかかりませんが、事業に必要なパソコンやプリンターの購入費、名刺やホームページの制作費、広告宣伝費など、一定の初期費用は発生します。また、事業が軌道に乗るまでの運転資金として、月商の約3~6か月分を確保する必要があります。初期費用を抑える方法としてレンタルオフィスを利用するのも1つの選択肢です。
法人の場合
合同会社や一般社団法人など、さまざまな会社形態がありますが、ここでは株式会社の会社設立費用について取り上げます。株式会社として法人設立の場合、まず法務局での法人登記が必要となり、設立時には約21万~25万円程度の費用が発生します。登録免許税として15万円または資本金の0.7%のいずれか高いほうの費用、公証人に支払う定款認証手数料として約5万円、収入印紙代として4万円(電子定款の場合は不要)、定款の謄本手数料として約2千円がかかります。加えて資本金も別途必要です。
法人化後は法人税のほか、社会保険料、オフィスの家賃・光熱費、税理士報酬などの維持費も発生します。賃料や設備費用を削減するには、レンタルオフィスを利用する方法もおすすめです。
起業資金の調達方法
起業に必要な資金の調達方法は複数あり、それぞれ特徴や注意点が異なります。それぞれのメリット・デメリットを比較し、自分に合う方法を見極めましょう。
ここからは、起業資金の主な調達方法を7つ紹介します。
自己資金でまかなう
自己資金とは、起業者自身が準備した預貯金や退職金、資産売却で得た資金などです。自己資金で起業費用をまかなう方法は、利息・保証金の負担や返済の義務がないほか、外部資本による干渉を受けず、経営上の自由度が高くなる点がメリットです。
ただし、自己資金で用意できる金額には限界があり、自己資金だけに頼りすぎると資金不足に陥る恐れがあります。そのため、レンタルオフィスなどを活用して初期投資を抑えつつ、十分な運転資金を確保する必要があります。
親族・知人から借りる
親族や知人からの借入は、金融機関での融資が難しい場合に利用できる資金調達方法です。金融機関のような厳しい審査がなく、比較的簡単かつ迅速に資金を調達できる点が、メリットとして挙げられます。
しかし、返済期日を曖昧にしたり口約束だけで済ませたりすると、後で金銭トラブルに発展する恐れがあります。万が一返済できない場合には、関係性が崩れるかもしれません。親族・知人から借りるときは、返済条件や利息の有無を明確に記した金銭消費貸借契約書を作成することもポイントです。
銀行や信用金庫・信用組合から借りる
銀行や信用金庫、信用組合は、預金を受け入れて融資を行う金融機関です。銀行は広域で営業を展開して大規模な融資も行っているのに対し、信用金庫・信用組合は地域密着型で比較的小規模な事業者への融資を得意としています。金融機関から資金を借りる方法では、経営への直接的な介入がなく、信用度が向上しやすい点がメリットです。
ただし、金融機関から融資を受ける場合、十分な自己資金や具体的な事業計画・返済計画を用意し、厳しい審査を通過する必要があります。金利負担や返済義務を負うことから、設立間もない場合や自己資金が不十分な場合は融資を受けにくいという側面もあります。
制度融資を利用する
制度融資とは、自治体と金融機関、信用保証協会が連携して提供する融資制度です。信用保証協会が債務を保証することなどから、起業間もない事業者でも比較的低金利かつ長期間の借入ができます。自治体によっては、金利や保証料の一部補助があります。
一方で、自治体・金融機関・信用保証協会それぞれの審査を経る必要があるため、申し込みから融資実行までに1~3か月程度の時間がかかるほか、保証料の負担が生じる場合がある点には注意が必要です。
日本政策金融公庫の融資を受ける
日本政策金融公庫は国が100%出資する公的な金融機関で、起業時や中小企業向けに低金利の融資を行っています。代表的な制度には、起業から7年以内の事業者が利用できる「新規開業・スタートアップ支援資金」や「新事業育成資金」、女性や35歳未満の若者、55歳以上のシニアの起業を支援する「女性、若者/シニア起業家支援資金」などがあります。
日本政策金融公庫の創業融資は、条件を満たせば、無担保・無保証で利用することが可能です。ただし、申し込みから融資実行までには数週間かかり、金利負担が発生する点もデメリットに挙げられます。
投資家や投資会社から出資を受ける
投資家や投資会社からの出資とは、株式と引き換えに資金を調達する方法です。特に創業間もない企業に出資を行う個人投資家は、エンジェル投資家と呼ばれます。ベンチャー企業に対して投資するファンドはベンチャーキャピタルと呼ばれ、上場や企業価値の向上後に株式を売却して利益を得ることを目的としています。
投資家や投資会社から出資を受けるのは、返済義務がなく、資金調達に加えて経営面のアドバイスや人的ネットワークの提供を受けられる点がメリットです。一方、出資比率に応じて出資者から経営に一定の介入を受ける可能性があるため、経営の自由度が下がる点はデメリットと言えます。
クラウドファンディングを利用する
クラウドファンディングとは、インターネットを活用し、多数の人々から少額ずつ資金を募る方法です。具体的な事業アイデアや商品をウェブサイト上で公開し、共感した個人から支援金を集めます。
クラウドファンディングは支援者にリターン(商品・サービス)を提供する購入型が代表的で、資金調達と同時にテストマーケティングやPR効果も期待できます。反面、目標額に到達しなければ資金が受け取れない場合もあり、アイデアの公開に伴う模倣リスクにも注意が必要です。
まとめ
起業時の資金準備では、まず事業計画を立てた上で、事業内容に見合う資金額を明確にすることが重要です。資金調達方法には、自己資金や親族からの借入、金融機関からの融資、制度融資や公的機関の利用、投資家からの出資、クラウドファンディングなど、幅広い種類があります。
どの方法を選ぶにしても、資金計画と事業計画書の作成が成功の鍵を握ります。計画性のある資金調達を行えば、資金不足で事業が停滞するリスクを回避でき、安心して事業を軌道に乗せられるでしょう。オフィス賃料や設備費用を抑えるために、レンタルオフィスを利用するのもおすすめです。