クリニックの開業に必要な資金はいくら?内訳や診療科別の目安を解説
投稿日:2025年9月18日
更新日:2025年9月18日

クリニックを開業する際に気になるのが「どのくらいの資金が必要か」という点でしょう。一般的に開業には数千万円規模の費用がかかり、診療科目や診療範囲によって必要額は大きく変動します。融資を受けるだけでなく、総資金の1~2割程度の自己資金を用意しておくと、資金調達や開業後の経営安定にも有利です。
当記事では、クリニック開業に必要な自己資金や資金内訳を整理した上で、診療科別の開業資金の目安を詳しく解説します。開業を検討している方は、自院の計画にあわせた資金計画を立てる参考にしてください。
目次
クリニック開業に必要な自己資金
クリニックを開業する際には、金融機関から融資を受けることが一般的ですが、自己資金も一定額を準備しておくことが望ましいとされています。開業の規模や診療科目によって必要額は変動しますが、一般的には総開業資金の1~2割程度を目安に考えると安心です。たとえば、クリニックの開業資金は5,000万~1億円程度とされており、その場合は500万~2,000万円程度の自己資金が目安となります。
自己資金を確保しておくことで融資審査を有利に進められるほか、開業後の資金繰りの安定にもつながります。自己資金が少ないからといって開業が不可能になるわけではありませんが、開業を現実的に進める上で準備しておくことが望ましいでしょう。
開業に必要な資金の内訳
クリニック開業に必要な資金は、規模や診療科目によって大きく変動しますが、主な費用項目は共通しています。まず土地や建物にかかる不動産費用、仲介会社への手数料、患者層に合わせた内装工事費があります。次に、診療に不可欠な医療機器や什器の購入費、スタッフ採用や広告宣伝のための費用も必要です。さらに、開業直後は患者数が安定しないため、一定期間の人件費や家賃・光熱費を賄う運転資金も確保しておかなければなりません。
費用項目 | 概要 |
不動産費用 | 購入・賃貸、敷金・礼金など |
内装工事費 | 診療科目に適した内装整備 |
医療機器・什器 | 検査機器や電子カルテ等 |
採用・人件費 | 医師以外のスタッフ確保 |
広告宣伝費 | チラシやWEB広告等 |
運転資金 | 開業後の固定費を賄う資金 |
【診療科別】クリニックの開業資金の目安
診療科 | 開業資金の目安金額 |
内科 | 約6,000万~8,000万円 |
整形外科 | 約6,000万~9,000万円 |
眼科 | 約5,000万~7,500万円 |
耳鼻咽喉科 | 約5,000万~8,000万円 |
皮膚科 | 約2,000万~6,000万円 |
小児科 | 約4,000万~6,000万円 |
精神科・心療内科 | 約1,500万~3,000万円 |
産科・婦人科 | 約5,000万~6,000万円 |
クリニック開業に必要な資金は、診療科目によって大きく異なります。一般的には数千万円規模が必要であり、たとえば整形外科や内科では約6,000万~9,000万円かかります。一方、精神科や心療内科は約1,500万~3,000万円と比較的低い水準での開業も可能です。
診療科ごとに必要な医療機器や設備が異なるため、このように大きな差が生じます。以下では、各診療科別に開業資金の目安を解説します。
内科
内科の開業資金は約6,000万~8,000万円が目安とされています。自己資金は約600万~1,600万円ほど準備できると安心でしょう。内科は一般内科だけでなく、消化器内科や循環器内科など専門領域によって必要な設備が大きく異なります。
たとえば、消化器内科では上下内視鏡に対応するため検査室や回復室、複数のトイレ設置が必要になり、設備投資額が増える傾向にあります。循環器内科や呼吸器内科も専門性の高い医療機器が必須となるため、一般内科に比べて費用が高くなるケースがあります。開業を検討する際は、診療科の専門性や導入機器の範囲を明確にし、資金計画を立てましょう。
整形外科
整形外科の開業資金は約6,000万~9,000万円が目安で、自己資金は約600万~1,800万円ほどあるのが望ましいです。整形外科クリニックは一般診療に加え、リハビリテーションを行うための広いスペースや設備が必要になります。X線撮影装置や骨密度測定装置などの検査機器に加え、リハビリ機器やベッドの導入が必須となるため、他の診療科目よりも初期費用が高くなりがちです。
理学療法士や作業療法士など専門スタッフの雇用も欠かせないため、人件費も比較的高額になります。開業規模やリハビリ設備の充実度をどこまで求めるかによって資金計画は大きく変わるため、導入する機器や人員を慎重に検討しましょう。
眼科
眼科の開業資金は約5,000万~7,500万円が目安で、自己資金は約500万~1,500万円が目安です。眼科は診療範囲によって必要な費用が大きく変わるのが特徴です。白内障手術やレーザー治療を行う場合は、手術室の整備や専用医療機器の導入が必要となり、追加で数千万円の投資が発生することもあります。一方で、手術を行わない外来中心の診療であれば比較的費用を抑えられます。
若い世代をターゲットとする場合には、コンタクトレンズ検査用の診断機器が必須となるため、患者層や地域の需要に応じた診療範囲の設定が重要です。地域特性を踏まえた投資計画を立てることで、資金の使い方に無駄がなくなり、安定した経営につながるでしょう。
耳鼻咽喉科
耳鼻咽喉科の開業資金は約5,000万~8,000万円が目安で、自己資金は約500万~1,600万円ほど確保しておくのが望ましいでしょう。診療に必要なユニットや各種検査機器に加え、聴力検査のための防音室を設置する必要があるため、ほかの診療科に比べて建物工事費が高くなる傾向があります。
また、患者への説明を分かりやすくするため、カメラやモニターを導入しているクリニックも多く見られます。さらに、手術対応の有無によって導入すべき機器や必要スペースが大きく変わるため、開業計画段階で診療内容を明確にしておくことが大切です。地域の患者層や診療方針を踏まえた設備投資を行うことで、資金を有効に活用でき、安定した経営につながるでしょう。
皮膚科
皮膚科の開業資金は約2,000万~6,000万円程度が目安とされています。自己資金としては200万~1,200万円程度を用意できるとよいでしょう。皮膚科は高額な検査機器や広い敷地を必要としないため、比較的低コストで開業できる診療科です。
その一方で、美容皮膚科を取り入れる場合は、レーザー治療機器など高額な設備投資が必要となるため、開業資金は大きく増える傾向があります。診療内容やターゲット患者層をどう設定するかによって資金規模が大きく変わる点が特徴です。
小児科
小児科の開業資金は約4,000万~6,000万円が目安で、自己資金としては約400万~1,200万円ほどを準備しておくと安心です。小児科は高額な医療機器を必要としないケースが多いため、資金の多くは建物や内装に充てられます。特に感染症対策として隔離室や専用動線を確保することが重要であり、安心して受診できる環境づくりが求められます。
また、小児科は保護者同伴の来院が基本となるため、待合室を広めに設け、キッズスペースや授乳室、ベビーカー置き場を整備するケースも少なくありません。こうした設備を整えることで保護者からの信頼を得やすくなり、集患にもつながります。地域のニーズを踏まえた設計が、開業後の安定経営を支えるポイントです。
精神科・心療内科
精神科・心療内科の開業資金は約1,500万~3,000万円程度で、自己資金は150万~600万円が目安です。ほかの診療科と比べて必要な資金が少ないのが特徴で、理由は高額な医療機器や大規模な検査室が不要なためです。診察室や待合室を中心に構成できるため、比較的コンパクトな物件でも開業が可能です。
目立たない立地の方が好まれるケースもあり、不動産費用も抑えやすい傾向にあります。看護師配置が必須ではない点も人件費削減につながります。一方で、患者が落ち着ける空間づくりやプライバシーに配慮した内装は欠かせません。シンプルながら安心感を重視した設計が、患者からの信頼と継続的な通院につながります。
産科・婦人科
産科・婦人科の開業資金は約5,000万~6,000万円が目安ですが、これは「分娩なし」の場合です。自己資金としては約500万~1,200万円を見込むとよいでしょう。もし分娩に対応する場合は病床や分娩設備が必要になり、8,000万~1億円近くかかるケースもあります。
また、不妊治療を行う場合には、高度な生殖補助医療に必要な医療機器の導入が不可欠であり、費用が大きく上振れする要因となります。診療範囲が広がれば設備投資も比例して増えるため、開業前に明確なコンセプトを定めましょう。患者に安心感を与えるためには、施設面だけでなく、クリニックの強みを発信する取り組みも必要になります。
まとめ
クリニックの開業資金は診療科目や診療範囲によって大きく異なり、精神科では約1,500万~3,000万円ですが、整形外科や内科では約6,000万~9,000万円と幅があります。一般的に総開業資金の1~2割程度の自己資金を準備しておくと融資審査や開業後の経営安定に有利です。必要な設備や内装、スタッフ体制、地域の患者ニーズを踏まえた資金計画を立てることが、クリニック開業を成功させるためのポイントとなります。
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